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官制セクハラだと懸念される「婚活メンター制度」に反対する緊急院内集会および記者会見でスピーチをしました

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説明

2016年12月、内閣府が設置した有識者会議が、企業内での「婚活メンター」の設置等を提案する骨子案を公開したところ、ネット上では「官制セクハラ」だとして撤回を求める声が大きくなっていました(※ハフポスト記事参照)。

私も即座に反対するインターネット記事をアップした後、戒能民江氏(お茶の水女子大学名誉教授)、塩村文夏氏(当時東京都議会議員・現参議院議員)、石川大我氏(当時豊島区議会議員・現参議院議員)等と緊急院内集会と記者会見に出席し、反対のスピーチをしました。以下、用意した原稿を添付します。なお、皆でボイスアップしたことが功を奏し、この骨子案に関しては無事撤回となりました(※ハフポスト記事参照)。

自己紹介

はじめまして。勝部元気と申します。株式会社リプロエージェントという会社で働く女性を支援するコンサルティング事業を営む傍ら、ウェブメディアを中心に言論活動を行っています。「若者の恋愛や結婚に関する社会課題」も得意領域の一つでして、昨年2015年にはそれをテーマにした『恋愛氷河期』という書籍も出版させて頂きました。本日は宜しくお願い致します。

 

◆◆◆セクハラの助長◆◆◆

さて、今回の提言に関して言いたいことは大きく2つあります。

1.「セクハラの助長はやめてください!」ということと

2.「やって欲しいのはそれじゃない!」という点です。

まず、検討会では「セクハラに繋がらないよう留意するべき」とおっしゃっていましたが、それがセクハラ発生に対していったい何の抑止力になると言うのでしょうか?

 

セクハラの事例

セクハラは法的に許されないはずなのに、いまだに日本中の至るところに蔓延しているのが現状です。

・パートナーの有無や結婚願望について詮索されたり

・結婚していないことや恋人がいないことが笑いのネタにされたり

・「妻子持ちは責任感が違う」「主婦は気配りが違う」と暗に独身者が卑下されたり

・「だからあいつは結婚できないんだ」とこき下ろされたりするわけです

 

もちろん私自身もサラリーパーソン時代に受けたことがあります。結婚したいなんて誰にも一言も言っていないのに、「結婚結婚して一人前、落ち着いたほうだ良いんじゃないの」と言われました。求めてもいない上から目線のアドバイス、いわゆる「マンスプレイニング」をする人もたくさんいます。「ご両親も心配しているだろうからそろそろ安心させなきゃ」なんて言われるわけですね。

 

被害者泣き寝入りの構造

これらは証拠があって訴えれば勝訴できるケースもあると思います。ですが、日本社会は上下関係の規範がとても強く、正しいことを主張するよりも事を荒げることが悪とされるじゃないですか。だから声をあげるにも多大な労力が必要ですし、リスクも相当なものです。つまり被害者が非常に訴えにくい構造になっていて、泣き寝入りを強いられ、加害者が野放しになっているわけです。そのような中で今回の施策が投下されたらどうなるでしょうか?火に油を注ぐだけではないでしょうか?「火は消えていない」という現状をあまりに軽く見過ぎだと思います。

 

◆◆◆欲していないものを押し付けるその発想自体がハラスメント◆◆◆

次に、ニーズの話です。なぜ保育園を増やすのですか?働く親が求めているからですよね。なぜ給付型奨学金を拡充するのですか?経済的に困っている学生が求めているからですよね。では、なぜ企業を通して婚活の支援をするのですか?誰が?どの程度求めているのですか?

 

確かに結婚したい若者も、子供が欲しい若者も多数派です。でもそういう人が要望する政策の中で、「職場内での結婚奨励策」がどれほど上位にあるというのですか?ちなみにネットで簡易的なアンケート取ったら、望む人は望まない人の僅か6分の1でした。サンプルに問題があるので信用はできないのですが、そのような調査すらせずに設置を決定したのは、政策立案として論外です。

 

検討会ができることそのものがハラスメント

若者の状況やニーズを顧みずに結論ありきで決めようとしていることに対して、私は強い不信感と不快感を抱きました。相手の求めていないことを自分たちの都合で押し付ける。そう、実は検討会の設置そのものがハラスメントなんじゃないかとすら思うのです。

 

◆◆◆代替案の提案◆◆◆

「王道」を歩め!

では、結婚したい人や子供が欲しい人がどのような施策を望んでいるかと言えば、やはり出生率をV字回復させたヨーロッパの国々が行ったような「王道」を欲しているのだと思います。

たとえば

(1)子どもの社会保障や、教育費の公的支出の拡充

(2)世代間格差や、正規・非正規格差の是正

(3)長時間労働を是正して育児がしやすい環境の整備

(4)ジェンダー平等で、現代社会の価値観に合った多様なパートナーシップの実現

つまり、「若者を変えようとする」のではなくて、「国自身が変わらないといけない」んですよ。結婚制度や文化そのものにメスを入れて、今の若者が利用できる、かつ利用したいと思えるものへと変革しなければ、結婚する人が増えるとは思えません。

 

まとめ

以上のことから今回の提言には断固反対したいと思います。どうかこの国を間違った方向に進めないでください。以上です。

 

 

※写真は当日のものではありません